愛し愛され、狂い焦がれる。

「ほら、採用担当外されるかもなんて言っていたけれど。やっぱり俺じゃなきゃダメなんだよ。見たか、梨緒! これが実力差だ!」
「………」

高校への挨拶回りで、仁と社外に出た。
そんな移動の道中、車の中でそう叫ぶ。

「ほら梨緒、何か言えよ」
「…別に」
「……本当、ムカつく」


上司は会社を出る前『大切な挨拶回りだから』と言った。

そんな大切なことなら、上司が一緒に来てくれても良かったのに。
採用担当者継続になったとはいえ、仁では不安要素しかない。




最初に向かう学校は、私の母校である商工高校。
会社としては、採用活動に力を入れたい高校の1つだ。

だから…仁には粗相をして欲しくないのだけれども…。


「…多分、無理よね」
「……あ? 何か言った?」
「…別に」


何より。
今から会いに行く進路担当の先生って、中井先生だから。


中井先生は仁のことを知っているし。
これまでの粗相も…見てきた。


「………」


学校が近付くにつれて緊張し、心拍数が上がるのを抑えられない。



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