愛し愛され、狂い焦がれる。
2人
その後、仁は社長より退職勧告受けた。
反抗をすることもなく勧告に素直に従い、仁は自己都合ということで退職をして行った。
採用担当者は、やっぱり代わりがいないということで。
次が見つかるまでは私1人が担当をすることになった。
中井先生がお墨付きをしてくれたから。
そこまで協議をすることなく、すんなり承認された。
「…安永さん」
総務部室の自分のデスクで仕事をしていると、珍しい人が近付いて来た。
「……兼森さん…」
兼森さんは私の横で立ち止まり、そっと俯く。
「…仁と、別れた。仁、あんな人だとは、思わなかった」
「でも、1回忠告したよね」
「…うん。それでも、好きだったから。だけど、ダメだね。退職してから…目も当てられなくなった。あれが本性だったのだと思う。私、バカだった」
そう言いながら、兼森さんは涙を流し始めた。
「兼森さん。私は兼森さんが仁を奪ってくれたことで気付けたから。そこは感謝してる。ありがとう」
ちょっと皮肉を込めて、一言。
我ながら…酷い人だ。
「こんなにも嬉しくない感謝、初めてかも」
そう言って兼森さんは、笑いながら首を少し傾げた。
結局その後、兼森さんも会社を退職した。
何がそうさせたのかは誰も分からないが、仁も兼森さんもいなくなったことにより、何だか私の心はスッキリしていた…。