愛し愛され、狂い焦がれる。
再会
ある夏の暑い日。
今日は県主催の就職フェアに参加する。
県内高校2年生が対象で、ここでは業界説明や会社説明をしてパンフレットを渡すことができるのだが、直接的な採用活動は禁止。
高校生たちに、いかにうちの会社を知ってもらい覚えてもらうか。
採用担当者としての腕の見せどころだ。
「……」
「……」
しかし、気まずい。
設けられた会社のブースに、仁と2人。
別れた後の仁は、誰もいない2人きりの空間になると、執拗に私に対して暴言を吐く。
今朝もそうだ。
この会場までの1時間半。
車の中で、私と付き合っていた時に嫌だったことを、これでもかと言うくらい吐き出した。
しかもそれだけで済まず、今度は私の仕事態度にまで口を出す始末。
…あること無いこと。
事実に沢山の肉付けをして、あたかもそれが真実かのように…。
別れたのだから。
普通の先輩後輩に戻る。
ただ、それだけで良いのに。
仁は付き合っていた頃の優しさを一切見せず、ただただ私に牙を剥く。
何故だろう。
同じ部署で毎日顔を会わすからかな。
…分からない。
元カノを傷つけたい男性心理って、何?
「おい、呼び込みして来いよ」
「…」
「無視すんな」
「自分で行けば?」
「……はぁ?」
周りに聞こえないよう、小声でそんな会話をする。
険悪な雰囲気が漂ううちのブース。
仁がずっとその調子なら、高校生なんて近寄って来ないさ。
「ブス」
「…小学生かよ…」
私、この人のどこが好きだったのか。
今はもう、全く思い出せない。