愛し愛され、狂い焦がれる。

電車を複数乗り継ぎ、最寄り駅に着いたのは2時間後だった。
遠かったし、時間がかかりすぎた。

そして、ここから会社まで徒歩25分。

もう、嫌だ…。
そう思っても、帰るしか無いけれど。



定時をとうに過ぎた会社。
総務部室には、電話をした上司が居た。

「お、安永さん。…お疲れだったね」
「お疲れ様でした。本当にすみません」
「君が謝ることでは無いよ」

上司は立ち上がり、仁が戻って来てから経緯を話してくれた。


仁は帰って来て一言。
『安永が逃げやがった』と言ったらしい。

『安永が逃げたのは、自分が不甲斐ないが為に成果ゼロだったから』だと。

しかし、それより先に電話をしていた『置いて行かれた本人』の私。

上司が信じるのはどちらかなんて…言うまでもない。


「貞尾くんには反省文を書かせるよ。安永さんを置いて帰ったことによる、無駄な旅費の発生。高校に対して不信感を与えるような行動…など。特に後者は会社の名誉にも関わる。…反省してもらうから」
「…宜しくお願いします」

因みに仁は、私の胸ぐらを掴んだことを言っていなかったようだから。

そこもきちんと、上司には報告しておいた。





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