愛し愛され、狂い焦がれる。
想い
夜の河川敷。
駐車場にはポツポツと車が止まっているよう。
手を繋ぎ散歩をする2人。
車の中で愛を確かめ合う2人。
様々なカップルが目につく。
ここは、男女の逢瀬の場と化していた。
車を降りて、河川敷への入り口付近に向かう。
そこに、見慣れたその人が立っていた。
「中井先生…」
「安永…お疲れ」
中井先生。
改めて見ても、やはり昔と変わらないその姿。
それだけで高校時代を思い出させる。
「ここ、夜はこんなにもカップルがいるんだな」
「ね、初めて知りました」
ゆっくり隣に並んで河川敷に向かう。
そこにもカップルが溢れかえっていた。
私と先生は空いているベンチを見つけて腰を掛ける。
触れるか触れないか微妙な距離感に、心臓が高鳴る感覚がした。
「安永は…高校を卒業して何年経つんだっけ?」
「8年です」
「てことは、何歳?」
「26歳です」
「…時が、経ったな…」
「…はい」
今でも鮮明に思い出す。
高校時代に過ごした3年間。
長い人生の中の経った3年なのに、その日々は濃く色鮮やかに、今も思い出される。
時折、考えることがある。
高校時代に戻りたいと。
そんなこと、どれだけ願っても二度と叶わないのに。
悲しく苦しく、ただただ…虚しい。