佐々木くんは見えるらしい
「蒼空、女の子にはちゃんと優しくしないとダメよ? 優希ちゃん、久しぶりに来てくれたんだから」
リビングの扉のほうから声がした。
「アキさん……」
乙女の味方、佐々木くんのおじさんであるアキさんだ。
今日は佐々木くんが玄関の扉を開けてくれたから、アキさんがいるって知らなかった。
私に華麗にウインクをして、なにかを言いたそうに佐々木くんのことを見る。
「僕は別に来てくれなんて頼んでない」
佐々木くんはアキさんの視線を背中に感じたのか不機嫌そうな顔でそう言った。
私は複雑な気持ちになる。
たしかに私が勝手に来たんだけど。
それも勝手にトラブルを抱えて。
じゃなくて、そうだった、佐々木くんに説明しなきゃ。
「あの、佐々木くん、今回も助けてほしいんだけど、あ、ちゃんと説明もするし――」
「ちょっと待て」
玄関で本題に入ろうとしたら、佐々木くんに止められた。
「場所を変えよう」
両手を前に出して怖い顔で私のことを止めるものだから、怒られるのかと思った。
だけど、予想していたより佐々木くんの言葉は冷たくなかった。
でも、どうして場所を変えるんだろう?
「秋兎おじさん、お店、まだ使わないよね? ちょっと借りるよ」
私が場所を変える理由を考えていると、佐々木くんは後ろを振り返ってアキさんに声をかけた。
そして、玄関の靴箱の上に置かれている茶色の小物入れから、鍵をひとつ手に取った。
金色のクマのキーホルダーがついている鍵だ。
「いいけど、店内で暴れて、物壊したりしないでよ?」
リビングの入口からアキさんが心配そうに言う。
「なにを言ってるのか、わからない」
でも、佐々木くんは言葉を理解できなかったロボットみたいな言い方で靴をスリッパみたいに足に引っかけて、私の横を通り過ぎ、玄関の扉を開けた。
「こら、蒼空」
佐々木くんの背中に怒るアキさんと目が合う。
「蒼空のことよろしくね、優希ちゃん」
そう言われて、また黙ったままぺこっと頭を下げ、佐々木くんのあとを追った。
「どうしたの? お家じゃダメだった?」
佐々木くんに追いつくなり、私は彼に問いかけた。
リビングの扉のほうから声がした。
「アキさん……」
乙女の味方、佐々木くんのおじさんであるアキさんだ。
今日は佐々木くんが玄関の扉を開けてくれたから、アキさんがいるって知らなかった。
私に華麗にウインクをして、なにかを言いたそうに佐々木くんのことを見る。
「僕は別に来てくれなんて頼んでない」
佐々木くんはアキさんの視線を背中に感じたのか不機嫌そうな顔でそう言った。
私は複雑な気持ちになる。
たしかに私が勝手に来たんだけど。
それも勝手にトラブルを抱えて。
じゃなくて、そうだった、佐々木くんに説明しなきゃ。
「あの、佐々木くん、今回も助けてほしいんだけど、あ、ちゃんと説明もするし――」
「ちょっと待て」
玄関で本題に入ろうとしたら、佐々木くんに止められた。
「場所を変えよう」
両手を前に出して怖い顔で私のことを止めるものだから、怒られるのかと思った。
だけど、予想していたより佐々木くんの言葉は冷たくなかった。
でも、どうして場所を変えるんだろう?
「秋兎おじさん、お店、まだ使わないよね? ちょっと借りるよ」
私が場所を変える理由を考えていると、佐々木くんは後ろを振り返ってアキさんに声をかけた。
そして、玄関の靴箱の上に置かれている茶色の小物入れから、鍵をひとつ手に取った。
金色のクマのキーホルダーがついている鍵だ。
「いいけど、店内で暴れて、物壊したりしないでよ?」
リビングの入口からアキさんが心配そうに言う。
「なにを言ってるのか、わからない」
でも、佐々木くんは言葉を理解できなかったロボットみたいな言い方で靴をスリッパみたいに足に引っかけて、私の横を通り過ぎ、玄関の扉を開けた。
「こら、蒼空」
佐々木くんの背中に怒るアキさんと目が合う。
「蒼空のことよろしくね、優希ちゃん」
そう言われて、また黙ったままぺこっと頭を下げ、佐々木くんのあとを追った。
「どうしたの? お家じゃダメだった?」
佐々木くんに追いつくなり、私は彼に問いかけた。