桜吹雪が綺麗です。
「怖かったと、思いますよ。向こうは仕掛けるつもりだったのかもしれませんけど、仕掛けられた側は心の準備もないですし、たまったもんじゃないです。知ってます? 強姦って顔を殴られて、目つぶしされて鼻を折られて、滅茶苦茶にされていることもあるんですよ。顔を殴られたら誰だってひるみます。やる側はそういうのわかっていますし、相手を傷つけない配慮なんかしません。知り合いだからって、そこまでひどいことはされないなんて、思わないことです」

 すらりと言われて、さすがに顔が強張るのを感じた。
 想像だけで、足が震えてくる。
 自分はいまとんでもない危うい状況だったのではないかと、じわじわと思い知る。

(怖い)

 殴られたわけでもないのに、頬がひりひりと痛む錯覚すらした。
 柿崎は、千花の反応に気付いたようで「ごめんなさい」と小さく詫びてから、口調を和らげて続けた。

「そうは言っても、襲われた側は、相手を傷つけるのを躊躇いますよね。暴力を振るうのは怖いことですよ、やれと言われて突然できるものじゃない。しかも相手が知り合いなら、特に。こんなとき、ろくな抵抗ができなくても不思議はないと、俺は思います。今日、俺ここにいて良かった。あなたの助けになりましたよね?」

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