桜吹雪が綺麗です。

あなたのものに、なってしまいたい

 緊張しているように見えますが、確認します。
 セックスします?

 部屋に戻ってきて、前夜のようにベッドにもたれかかりながら、並んでコーヒーを飲む。
 肩がこわばっていることにはすぐに気づかれて、質問されてしまった。
 千花はあやうく、コーヒーをふきだしかけた。

「え……ええと……ええとですね……」
「急ぎじゃないので。したくなったら言ってください」

 連絡事項のように義務的に告げられて、呆然とその横顔を見てしまう。

(したくなったら、とは……!?)

 どうするのが「彼女」として正解なのだろうと、尋ねてみることにした。

「柿崎くんは、どうしたいですか?」
「したいけど、我慢できます」

 簡潔。
 どうとらえればいいんだろうと固まっていたら、困ったように眉を寄せて見下ろされた。

「先生は、我慢できないってねだる俺に、野獣のように襲われたいですか」
「い、いいえ。そういうのはちょっと……」

 野獣、野獣になるのか柿崎くん、と想像して、想像だけならかなりぐっとくるのだが、襲われる対象が自分かと思うと怖い。
 かといって、そこに別の女の子をあてはめるのも脳が拒否している。

「先生といるとずーっとドキドキしているので、俺はいつでもいいです。だけど、先生のドキドキは俺とは少し違いそう。いきなり、無理はしないでおきましょう」

 淡々と自己完結的に言い切り、ドキドキのかけらも見せずにコーヒーを飲み干す。
 それから、「映画でも見ます?」とのほほんと言って来た。

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