桜吹雪が綺麗です。
 抱き上げられて、ベッドの上に下ろされた。
 人一人軽々と持ち上げるほど、腕の力が強いのは、もう知っている。

(「見た目より力がある」ってあなたに言ったのは、誰……? どんな状況で?)

 不意に息が苦しくなったのは、胸の中で嫉妬が沸き上がったせい。
 きゅっと唇を噛みしめて目を閉ざす。
 ベッドがぎしりと沈み込んだ。
 隣に乗り上げてきた柿崎に、背後から、横になったまま抱き寄せられる。

「不安?」

 耳のすぐそばで囁かれた。
 千花はぎゅっと目を瞑ったまま、答えを考えて、結局「うん」と答える。
 柿崎の腕に力こめられた。

「どうすればその不安はなくなりそう? 俺にできることはある?」

 抱きしめられているだけで、胸が痛くて切ない。

「柿崎くんのことが、好き過ぎるの……。今までどんな恋愛してきたんだろうとか。来年も一緒にいられるのかなとか。ひとりでどんどん考えて不安になってる。持て余して、どうしていいかもわからない」

 くす、と首の後ろで笑われる。

「エッチの不安じゃないんだ」
「エッ……」

 さらりと言われた言葉に、恥ずかしさがこみあげてきて、心臓はバクバクと鳴る。

(絶対に聞こえてるよね、余裕全然ないの)

 柿崎の手が、痛いくらいに高鳴っている千花の胸に置かれた。
 全部伝わってしまう。隠せない。

「俺がリード出来たらいいのかもしれないけど、べつに恋愛の達人じゃないから、何が正解かがわからない。だから現時点での俺の考えを言います」
「はい」

 柿崎が改まった調子だったので、千花も思わず背筋を伸ばしながら返事をする。
 耳を澄ませていると、真面目くさった声で言われた。

「本当は余裕のあるふりして、がっついているところも見せないで『不安じゃなくなるまで待つよ』って言えばいいのかもしれない。だけど、先に『今しないと永遠にお預け』って聞いてしまっているので。先生の不安は俺のスキルじゃなくて、愛の方みたいだし。それならもういっそ、『どれだけ好きかわかってもらう』で良いですか。俺が今したいこと全部隠さず体で伝えるので、逃げないで受け止めてくれますか」

 わずかに息の乱れた声で、耳に直に言葉を流し込まれる。

 好きを、言葉だけじゃ伝えきれないんです。
 身体に刻み込みます。

 ――逃がす気、ないので。

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