無自覚姫は今日も美形集団を纏わせる
二重人格の転校生
転校生が来た。
そう、SSクラスに。
男の子だとか天才だとか入試試験は満点だとか色々噂は来ている。
「えー、知っている人がほとんどだと思うが、SSクラスに1人、生徒が加わるから1人ずつクラスがずれる」
SSクラスの最下位はSクラスへ、Sクラスの最下位はAクラスへ──となった。
そしてSSクラスにやってきた転校生が・・・。
「自己紹介をどうぞ」
「・・・蒼鷺 葵厘(あおさぎ きり)」
眼鏡をかけているけどすぐに顔が整ってるとわかる男の子。
背が高くて雰囲気的にはクールで物静か。
「・・・はは、蒼鷺の席は向埜鳥の隣だ。向埜鳥、手を上げてやってくれ」
はーい、と手を上げて転校生──葵厘くんを見る。
葵厘くんはちらっと私を見て近づいてくる。
鞄を置き、席に座ったのを見て私は手を下げた。
「みんな仲良くしてやってくれ。じゃあ始めるぞー」
1限目はなんと数学。
「・・・教科書、見せて」
あ、まだ届いてないのかな?
「いいよ」
机を合わせ、真ん中に教科書を開く。
「・・・ありがと」
ふふ、なんか弟みたいで可愛いなぁ。
授業中、少し隣を見てみると葵厘くんはノートを凄い速さで書いている。
字もまとめ方もきれいで思わず感嘆のため息が漏れる。
「・・・大丈夫?」
疲れのため息と思ったのか、葵厘くんは私を見て優しく目を細めた。
「うん、大丈夫!」
「・・・そう」
安心したように葵厘くんは視線をノートに戻し、また書き進める。
さ、私もノートとってテストに備えなきゃな・・・。
昼休み。
いつも通り部室でご飯を食べようとすると。
「一緒に食べない?」
葵厘くんがお誘いをしてくれた。
転校初日だから一緒に食べれる人もいないよね・・・。
「いいよ、食べよう」
頷くと葵厘くんは私の手を引き、歩き出した。
みんなにはあとで連絡しよう・・・。
連れてこられたのは東棟の空き教室。
転校初日で別棟に行こうと思うなんて凄いな・・・と感心する。
Vistaのみんながご飯を食べる部室は本棟を跨いだ反対側の西棟。
連絡を入れてから教室に入ると3つだけ机と椅子があった。
右の椅子に座り、お弁当を開ける。
すると葵厘くんは真ん中の椅子に座り、眼鏡をはずした。
眼鏡外して見えるのかな?と考えながらお弁当を見つけると左手にぬくもりが。
左手に重ねられたのは手。
腕をたどっていくと手の主は葵厘くんだったけど。
「・・・え?」
そこに居たのはさっきまでの葵厘くんではなかった。
「・・・だ、れ・・・?」
ふわふわの白に近い金髪を胸まで伸ばした美少年。
いや・・・女の子にも見える。
「葵厘だよ?」
き、葵厘くん・・・だよね?
「見た目が・・・」
「これ?こっちがホントの姿だよ?さっきのは変装。髪の毛の色目立つしね」
なんか・・・しゃべり方も可愛い?
さっきまで物静かなクール男子だったのに・・・!
「頭撫でて~」
・・・蓮羅くんが2人居る・・・。
とりあえずその頭をなでると見た通りふわふわ。
サラサラでふわふわって・・・最強じゃん。
葵厘くんが満足するまで頭をなでると、身を起こして眼鏡をかけた。
あ・・・髪色以外さっきの葵厘くんだ・・・。
「・・・」
きゃ、キャラも戻ってる・・・。
「葵厘くん、キャラ変えれるの?」
「変えれるっていうか・・・変わる?これ伊達メガネ」
そうなんだ・・・。
「自分の努力を認めてもらうために眼鏡に黒髪で過ごしてるんだ。そっちのほうが真面目っぽいでしょ」
「たしかに・・・」
「ってか葵厘くんってやめて。ホントの姿男っぽくないし、呼び捨てがいい」
「え・・・じゃ、じゃあ・・・葵厘」
葵厘は少し笑うと眼鏡をはずし、今度はニコニコし始めた。
可愛い・・・女として負けてる気がする・・・。
・・・あれ?
葵厘だけじゃなくて蓮羅くんにも負けてるよね・・・?
やばい、このままじゃ女として生きていけない・・・!わけではないけど。
2人と並ぶのはちょっと遠慮しなきゃな・・・。
「・・・ご飯食べよ?」
「うん」
葵厘はお弁当を開け、もぐもぐとご飯を食べている。
私も食べちゃおう・・・!
今日のお弁当はオムライス。
卵もケチャップライスも冷めて固くなっちゃってるけどそれでも美味しい・・・。
お母さんに感謝だな。
「ごちそーさま」
「ごちそうさまでした」
お弁当箱を片付け、葵厘はウィッグと眼鏡をつけた。
うん、葵厘だ!
「帰ろ」
キャラ通り、短くそう言った葵厘についていき、本棟に戻って教室に入る、と・・・。
「あ、戻ってきた!」
「やっぱり転校生とか~」
「・・・どういうことだ?」
「独り占めしてたのかぁ・・・」
Vistaのみんなに迎えられた。
「真空・・・転校生と食べたの?」
「え?うん。そうだよ」
「そんな・・・真空が誘ったの?」
「ううん、葵厘が誘ってくれたんだ」
「呼び捨て・・・」
そ、氷空くん・・・?
どうしたの、放心状態に見えるけどなんか葵厘のこと睨んでる・・・?
「・・・真空、予鈴鳴る」
葵厘がそう言った2秒後。
キーンコーンカーンコーン
ほんとに予鈴が鳴りました、ハイ。
すごいね、ちゃんと時計見て。
私はあまり時計見ないな。
そのためのチャイムだと思ってるからね。
「席つこ」
「うん」
葵厘に言われるまま、席につく。
そしてまた葵厘と机を引っ付けた。
教科書ないもんね。
机の真ん中に教科書を置き、ノートを開く。
「明日・・・」
「ん?」
「明日も、一緒に食べてくれる?」
「え・・・ん-っと」
どうしよう・・・葵厘、転校生なのに私が独り占めするのはよくないと思う・・・。
「えっと・・・クラスの子、紹介しようか?」
「いい。真空と食べたい」
「・・・っ」
なんて可愛いの・・・!と心の中で叫ぶ。
「・・・だめ・・・?」
「・・・く」
断れない・・・っ!
真面目な姿で甘えられると余計断れない・・・!!
っていうかキミ、ふつーにキャラ変ええるじゃん。
さっきのは嘘だったのか?!
・・・と頭の中で劇が始まる。
「・・・大丈夫?」
キャラを取り戻した葵厘が心配そうに顔を覗き込んでくるけど!
原因は葵厘だよ?!
とか素直に言っちゃったらこの姿で分かりやすくズーンと落ち込んでしまうだろう。
言っちゃだめだよね・・・ウン。
「大丈夫。あ、授業始まるね」
気づかなかったんだ。
氷空くんがなにか言いたげな視線を葵厘に・・・。
そして私に送ってたなんて──。
そう、SSクラスに。
男の子だとか天才だとか入試試験は満点だとか色々噂は来ている。
「えー、知っている人がほとんどだと思うが、SSクラスに1人、生徒が加わるから1人ずつクラスがずれる」
SSクラスの最下位はSクラスへ、Sクラスの最下位はAクラスへ──となった。
そしてSSクラスにやってきた転校生が・・・。
「自己紹介をどうぞ」
「・・・蒼鷺 葵厘(あおさぎ きり)」
眼鏡をかけているけどすぐに顔が整ってるとわかる男の子。
背が高くて雰囲気的にはクールで物静か。
「・・・はは、蒼鷺の席は向埜鳥の隣だ。向埜鳥、手を上げてやってくれ」
はーい、と手を上げて転校生──葵厘くんを見る。
葵厘くんはちらっと私を見て近づいてくる。
鞄を置き、席に座ったのを見て私は手を下げた。
「みんな仲良くしてやってくれ。じゃあ始めるぞー」
1限目はなんと数学。
「・・・教科書、見せて」
あ、まだ届いてないのかな?
「いいよ」
机を合わせ、真ん中に教科書を開く。
「・・・ありがと」
ふふ、なんか弟みたいで可愛いなぁ。
授業中、少し隣を見てみると葵厘くんはノートを凄い速さで書いている。
字もまとめ方もきれいで思わず感嘆のため息が漏れる。
「・・・大丈夫?」
疲れのため息と思ったのか、葵厘くんは私を見て優しく目を細めた。
「うん、大丈夫!」
「・・・そう」
安心したように葵厘くんは視線をノートに戻し、また書き進める。
さ、私もノートとってテストに備えなきゃな・・・。
昼休み。
いつも通り部室でご飯を食べようとすると。
「一緒に食べない?」
葵厘くんがお誘いをしてくれた。
転校初日だから一緒に食べれる人もいないよね・・・。
「いいよ、食べよう」
頷くと葵厘くんは私の手を引き、歩き出した。
みんなにはあとで連絡しよう・・・。
連れてこられたのは東棟の空き教室。
転校初日で別棟に行こうと思うなんて凄いな・・・と感心する。
Vistaのみんながご飯を食べる部室は本棟を跨いだ反対側の西棟。
連絡を入れてから教室に入ると3つだけ机と椅子があった。
右の椅子に座り、お弁当を開ける。
すると葵厘くんは真ん中の椅子に座り、眼鏡をはずした。
眼鏡外して見えるのかな?と考えながらお弁当を見つけると左手にぬくもりが。
左手に重ねられたのは手。
腕をたどっていくと手の主は葵厘くんだったけど。
「・・・え?」
そこに居たのはさっきまでの葵厘くんではなかった。
「・・・だ、れ・・・?」
ふわふわの白に近い金髪を胸まで伸ばした美少年。
いや・・・女の子にも見える。
「葵厘だよ?」
き、葵厘くん・・・だよね?
「見た目が・・・」
「これ?こっちがホントの姿だよ?さっきのは変装。髪の毛の色目立つしね」
なんか・・・しゃべり方も可愛い?
さっきまで物静かなクール男子だったのに・・・!
「頭撫でて~」
・・・蓮羅くんが2人居る・・・。
とりあえずその頭をなでると見た通りふわふわ。
サラサラでふわふわって・・・最強じゃん。
葵厘くんが満足するまで頭をなでると、身を起こして眼鏡をかけた。
あ・・・髪色以外さっきの葵厘くんだ・・・。
「・・・」
きゃ、キャラも戻ってる・・・。
「葵厘くん、キャラ変えれるの?」
「変えれるっていうか・・・変わる?これ伊達メガネ」
そうなんだ・・・。
「自分の努力を認めてもらうために眼鏡に黒髪で過ごしてるんだ。そっちのほうが真面目っぽいでしょ」
「たしかに・・・」
「ってか葵厘くんってやめて。ホントの姿男っぽくないし、呼び捨てがいい」
「え・・・じゃ、じゃあ・・・葵厘」
葵厘は少し笑うと眼鏡をはずし、今度はニコニコし始めた。
可愛い・・・女として負けてる気がする・・・。
・・・あれ?
葵厘だけじゃなくて蓮羅くんにも負けてるよね・・・?
やばい、このままじゃ女として生きていけない・・・!わけではないけど。
2人と並ぶのはちょっと遠慮しなきゃな・・・。
「・・・ご飯食べよ?」
「うん」
葵厘はお弁当を開け、もぐもぐとご飯を食べている。
私も食べちゃおう・・・!
今日のお弁当はオムライス。
卵もケチャップライスも冷めて固くなっちゃってるけどそれでも美味しい・・・。
お母さんに感謝だな。
「ごちそーさま」
「ごちそうさまでした」
お弁当箱を片付け、葵厘はウィッグと眼鏡をつけた。
うん、葵厘だ!
「帰ろ」
キャラ通り、短くそう言った葵厘についていき、本棟に戻って教室に入る、と・・・。
「あ、戻ってきた!」
「やっぱり転校生とか~」
「・・・どういうことだ?」
「独り占めしてたのかぁ・・・」
Vistaのみんなに迎えられた。
「真空・・・転校生と食べたの?」
「え?うん。そうだよ」
「そんな・・・真空が誘ったの?」
「ううん、葵厘が誘ってくれたんだ」
「呼び捨て・・・」
そ、氷空くん・・・?
どうしたの、放心状態に見えるけどなんか葵厘のこと睨んでる・・・?
「・・・真空、予鈴鳴る」
葵厘がそう言った2秒後。
キーンコーンカーンコーン
ほんとに予鈴が鳴りました、ハイ。
すごいね、ちゃんと時計見て。
私はあまり時計見ないな。
そのためのチャイムだと思ってるからね。
「席つこ」
「うん」
葵厘に言われるまま、席につく。
そしてまた葵厘と机を引っ付けた。
教科書ないもんね。
机の真ん中に教科書を置き、ノートを開く。
「明日・・・」
「ん?」
「明日も、一緒に食べてくれる?」
「え・・・ん-っと」
どうしよう・・・葵厘、転校生なのに私が独り占めするのはよくないと思う・・・。
「えっと・・・クラスの子、紹介しようか?」
「いい。真空と食べたい」
「・・・っ」
なんて可愛いの・・・!と心の中で叫ぶ。
「・・・だめ・・・?」
「・・・く」
断れない・・・っ!
真面目な姿で甘えられると余計断れない・・・!!
っていうかキミ、ふつーにキャラ変ええるじゃん。
さっきのは嘘だったのか?!
・・・と頭の中で劇が始まる。
「・・・大丈夫?」
キャラを取り戻した葵厘が心配そうに顔を覗き込んでくるけど!
原因は葵厘だよ?!
とか素直に言っちゃったらこの姿で分かりやすくズーンと落ち込んでしまうだろう。
言っちゃだめだよね・・・ウン。
「大丈夫。あ、授業始まるね」
気づかなかったんだ。
氷空くんがなにか言いたげな視線を葵厘に・・・。
そして私に送ってたなんて──。