無自覚姫は今日も美形集団を纏わせる
夜
今日母さんは出張で帰ってこない。
いまは20時で、使用人たちは使用人棟で洗濯や片づけを、シェフは奥のキッチンで明日の仕込みをしている。
ソファで本を読んでいる真空の肩をトンッと軽く叩けば気配を感じていたのか、あまり驚かずに振り返った。
「ね・・・俺のやりたいこと、今からやっていい?」
「やりたいこと・・・?」
「なんとなくわかんない?」
「ん-・・・それってみんながやりたいようなこと?」
「どちらかと言えば違うかな。ほら、夜に男女がやることと言えば・・・?」
「夜に男女がやること・・・?」
俺の頭の中では公式が出来上がっている。
《日中×男女=デート×夜=夜デート》!
・・・という素晴らしい計画を現した公式が!!
「やってくれる?」
「えっと・・・うん」
「やった。じゃあ動きやすい服に着替えてきて」
「・・・うん?」
疑問のように聞こえたけどまぁいい。
楽しみだなぁ・・・屋敷を抜け出して真空とデートか・・・。
これが使用人に知られたら怒られそうだけど母さんに訳をはなせばすぐに許しが出るだろう。
母さんも真空がお嫁にくることを待っているからね。
しばらくしてやってきたのはラフな服装をした真空。
白のTシャツにジーパン。
紺色のカーディガン。
・・・可愛い。
一般人が着たら地味に見えるだろうけど真空が着ればおしゃれなブランド品に見える。
ファッション雑誌の1ページから飛び出してきたみたいだ。
制服なんてファッションショーかと思うくらい着こなしてるし。
きっと芸能界1の美人よりも美人だ、ウン。
・・・ま、ファッション雑誌もファッションショーも芸能界1の美人も見たことないから言えないけど。
「いっこか、夜デート!」
音でばれないように玄関の正反対の温室に行く。
温室の窓からでて、真空も出るのを手伝って夜デートが始まった。
30分くらい歩けば丘があって、遊園地がある。
たしか名前が『ナイト遊園地』だった気がする。
夜にだけ開いている遊園地だ。
「ジェットコースター行こ!」
「うん」
入場料を払えば乗り放題。
ジェットコースターは10種類くらいあって全部制覇しちゃいました。
「メリーゴーランドだ!」
「乗る?」
「うん、乗ろ」
俺は白馬に、真空は黒馬に乗る。
「遊園地って初めて来た」
「えっ・・・」
遊園地が初めて・・・?
「親が・・・小さいときは危ないって、大きくなったら放任主義になってお金がかからないところにしか行かせてもらえなかった」
「お金がかからないところなんてあるの?」
「案外身近なところだよ。公園とか図書館とかさ」
「そんな・・・」
あまりの酷い事実に言葉が出てこない。
何か言わなければ。
何か言わなければ真空を余計傷つけてしまう。
でも下手に話しかけるのもな・・・。
迷っていると真空から話してくれた。
情けない男だな・・・。
女の子に率先させてやらせてどーすんの。
付き合ったら女の子からスキンシップ取ってもらう事になるよ?
「でも子供の時どこにも行かなかった分・・・出会いが新鮮で、身近なものの素晴らしさが分かって。物のありがたみも理解して。ある意味いい教育だったのかもね」
そんな風にポジティブに考えてるように言ってるけど・・・。
ずっと『私はみんなと違うんだ』って思ってただろう。
大丈夫、これからは俺が支えるから──なんて、さっき主導権握ってもらって言ってる自分がおかしくて、思わず笑みが零れた。
〈side 氷空 END〉
今日母さんは出張で帰ってこない。
いまは20時で、使用人たちは使用人棟で洗濯や片づけを、シェフは奥のキッチンで明日の仕込みをしている。
ソファで本を読んでいる真空の肩をトンッと軽く叩けば気配を感じていたのか、あまり驚かずに振り返った。
「ね・・・俺のやりたいこと、今からやっていい?」
「やりたいこと・・・?」
「なんとなくわかんない?」
「ん-・・・それってみんながやりたいようなこと?」
「どちらかと言えば違うかな。ほら、夜に男女がやることと言えば・・・?」
「夜に男女がやること・・・?」
俺の頭の中では公式が出来上がっている。
《日中×男女=デート×夜=夜デート》!
・・・という素晴らしい計画を現した公式が!!
「やってくれる?」
「えっと・・・うん」
「やった。じゃあ動きやすい服に着替えてきて」
「・・・うん?」
疑問のように聞こえたけどまぁいい。
楽しみだなぁ・・・屋敷を抜け出して真空とデートか・・・。
これが使用人に知られたら怒られそうだけど母さんに訳をはなせばすぐに許しが出るだろう。
母さんも真空がお嫁にくることを待っているからね。
しばらくしてやってきたのはラフな服装をした真空。
白のTシャツにジーパン。
紺色のカーディガン。
・・・可愛い。
一般人が着たら地味に見えるだろうけど真空が着ればおしゃれなブランド品に見える。
ファッション雑誌の1ページから飛び出してきたみたいだ。
制服なんてファッションショーかと思うくらい着こなしてるし。
きっと芸能界1の美人よりも美人だ、ウン。
・・・ま、ファッション雑誌もファッションショーも芸能界1の美人も見たことないから言えないけど。
「いっこか、夜デート!」
音でばれないように玄関の正反対の温室に行く。
温室の窓からでて、真空も出るのを手伝って夜デートが始まった。
30分くらい歩けば丘があって、遊園地がある。
たしか名前が『ナイト遊園地』だった気がする。
夜にだけ開いている遊園地だ。
「ジェットコースター行こ!」
「うん」
入場料を払えば乗り放題。
ジェットコースターは10種類くらいあって全部制覇しちゃいました。
「メリーゴーランドだ!」
「乗る?」
「うん、乗ろ」
俺は白馬に、真空は黒馬に乗る。
「遊園地って初めて来た」
「えっ・・・」
遊園地が初めて・・・?
「親が・・・小さいときは危ないって、大きくなったら放任主義になってお金がかからないところにしか行かせてもらえなかった」
「お金がかからないところなんてあるの?」
「案外身近なところだよ。公園とか図書館とかさ」
「そんな・・・」
あまりの酷い事実に言葉が出てこない。
何か言わなければ。
何か言わなければ真空を余計傷つけてしまう。
でも下手に話しかけるのもな・・・。
迷っていると真空から話してくれた。
情けない男だな・・・。
女の子に率先させてやらせてどーすんの。
付き合ったら女の子からスキンシップ取ってもらう事になるよ?
「でも子供の時どこにも行かなかった分・・・出会いが新鮮で、身近なものの素晴らしさが分かって。物のありがたみも理解して。ある意味いい教育だったのかもね」
そんな風にポジティブに考えてるように言ってるけど・・・。
ずっと『私はみんなと違うんだ』って思ってただろう。
大丈夫、これからは俺が支えるから──なんて、さっき主導権握ってもらって言ってる自分がおかしくて、思わず笑みが零れた。
〈side 氷空 END〉