無自覚姫は今日も美形集団を纏わせる
〈side 氷空〉
遊園地を全制覇し、お土産屋さんに入る。
「好きなもの買ってあげる」
「え・・・申し訳ないし、こういうのは自分で買いたいの。『この人に買ってもらった』っていう記憶もいいけど『自分で楽しんで、自分で買った』っていう記憶の方がいいと思うんだ」
・・・なんていい子なんだろう。
こんなところが好きだなぁって思う。
結局、キーホルダーを買っていた真空をチラリと見ながらあるものを買う。
「帰ろっか」
出口を抜け、歩く時間でさえも幸せ。
こんな時間を真空と過ごせるなんて・・・俺はなんて幸福なんだろう。
「あ、そうだ。・・・真空」
ポケットからさっき買ったあるものを取り出して拳で隠す。
「なぁに?」
不思議そうに振り返る真空の右手をとった。
「はい」
「これ・・・って」
真空の右手に付けたのは真珠のブレスレット。
「さっき買ったんだ。前さ、ブレスレットの意味は《束縛》って迷信を聞いたことがあって。買ってみた」
「ありがとう・・・」
嬉しそうに微笑みながらブレスレットを撫でる真空に苦笑する。
流されたな・・・。
束縛したいって思ってもらうためにはいい道具だと思ったんだけどなぁ。
ま、喜んでもらえたし、いっか。
「実は私からもあるんだ」
え・・・真空からも?
「このキーホルダー・・・」
磁石でくっつくようになっているダイヤ型のキーホルダー。
真空が白雪っぽいお姫様で俺のは白馬の王子様。
「白馬・・・の、王子様ね」
「うん。メリーゴーランドに乗る氷空くんがそれっぽかったから。みんなから王子様って言われてるし、乗ってたのが白馬だったから。私がお姫様なのは自分でも納得できないけどね」
恥ずかしそうにはにかむ真空は。
「これ、学校の鞄に付けようと思うんだ。氷空くんも・・・付けてくれる?」
「もちろん」
「あとね、うちの学校2つまでアクセサリーOKだからブレスレットも付ける!」
「ありがとう。・・・ね、いっこきいていい?」
「うん?」
俺は少し意地悪な手に出ることに。
「真空は俺の事を真空の王子様にしてくれるの?」
「ん?どういうこと?・・・あ、もしかして劇とか好きなのかな?じゃあ・・・」
気の利く返事をしようと思ったんだろう。
真空はわざとらしく優雅に微笑んだ。
「私をあなたの姫にしてくれるのですか?」
「・・・えぇ、もちろんです、姫。ここで誓いましょうか?」
「ふふ」
おかしそうにしながらも楽しそうに笑う真空。
へぇ・・・本気にしちゃおっかな?
「これからあなたを守り、愛すこと。鷹御 氷空の名に誓います」
片膝をついてブレスレットの付いた方の手にキスをする。
「・・・さて、かえろっか」
真空の声に腕時計を見ると深夜の3時。
・・・明日が休みでよかった。
ってか世界のカップルの夜デートはこんなに遅くまでデートするのかな?
少し考えて俺は真空の手を取り、家まで戻った。
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