ももちゃんとUMA

ももちゃんのパパとママ

 桜山家は有誠が小学校に入学する頃に隣に引っ越して来た。ももちゃんのママはほんわかした綺麗な人だった。

「ゆうまくん、よろしくね」

「ありまだよ」と文句を言ったら、有誠は母に「こらこら」と嗜められる。

「そっか、ありまくんね。ごめんなさいね」ももちゃんのママは嫌な顔せず言った。「お隣に同級生のお子さんがいるなんて心強いわ。ほらももちゃんもご挨拶」

 ちいさなももちゃんが、ぽてぽてとママの陰から現れる。不安と不機嫌がないまぜになったくしゃくしゃの顔をしていた。本当はどんな顔なのか、この時はわからなかったほどだ。

「こんにちは」

 ももちゃんは挨拶すると、またぽてぽてとママの陰に隠れた。

 ももちゃんのパパはすらりとしていて、ママと同じように優しそうだ。しゃがんで、有誠と視線を合わせると穏やかな表情で言った。

「有誠くん、初めまして。ももは僕に似てちょっとぼんやりしているし、この通り人見知りだからちょっと心配でね。良かったら仲良くしてくれると嬉しいな」

 そしてももちゃんには、「ももも、有誠君が困っていたら助けてあげるんだよ」と言う。ももちゃんはやはり困ったように、ママの足に縋り付いたままだ。

 ももちゃんのパパは社交辞令を言ったのかも知れない。

 しかし、有誠少年はこうはっきりと大人に頼りにされるのは初めてで、そしてそのことをとても誇らしく感じた。あまりに誇らしかったので、ももちゃんのパパの言葉をかなり曲解した。

 僕がももちゃんを守るんだ。
 有誠はひそかに拳をぎゅっと握った。
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