陰が日向に変わる時
美春はゆっくりと引き戸を開ける。
開けた瞬間、畳の匂いに混じって少々カビ臭さを感じた。
四畳半の部屋に、簡易的なテーブルがぽつんと置かれている。半窓から陽は差し込んでいるが、なんとなく薄暗い。レースカーテンを開けると、目の前は塀だった。

今度は押入れを開けてみる。布団一式と、衣装ケース、扇風機、電気ストーブが入っていた。備え付けの金庫もある。

貴重品はここに入れろってことかな?

衣装ケースの中には白いブラウス、黒いパンツ、エプロンが2着ずつ入っていた。

これに着替えろってことだよね。

美春は改めて部屋を見回した。

あれ? 部屋の内鍵は? え⁉︎ ないの⁉︎
中から鍵をかけれないなら、誰でも入って来れるじゃない!

ふと、襖近くに立てかけられた長い棒が目に入った。

これ何? 鍵がないから、変な奴が来たらこれで殴れってことかな?

美春の口からため息が溢れた。


私、ずっとここで暮らすんだよな……
なんか息苦しいな……


言い知れない不安が美春を襲った。
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