陰が日向に変わる時
翌朝、泣き腫らした目を冷たい水で冷やし、仕事着に着替えた。
泣いても現状は変わらない。とにかくやるしかないのだ。ここには麗果もいる。

美春は母屋玄関の掃除に向かう。
しばらく玄関先を箒で掃いていると、おしゃれをした麗果が姿を見せた。

「麗果ちゃん、おはよう」

美春が笑顔で声をかけると、麗果は美春に詰め寄った。

「お嬢様」

「え?」

「お嬢様、でしょ。使用人の分際で馴れ馴れしいわよ。そこどいて、出かけるから」

冷ややかな視線を美春に向けた。

美春は後退りし、箒を握りしめたまま呆然と立ち尽くしていた。

そしてその出来事は、序章に過ぎなかったのだ。

古城家での美春の扱いはまるで奴隷だった。
自宅から持ってきた数冊のファッション雑誌も目障りだと捨てられ、高校に通えない分、自分なりに勉強しようと毎月渡される1万円の中から買った参考書も「あんたには必要ない」と、麗果から破り捨てられた。

この家では自由を求めることもできない。
だが、そんな最悪な古城家でも、週に一度は帰省を許された。
美春は毎週土曜日に帰省する。
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