陰が日向に変わる時
「ねぇ、ミハルってどんな字を書くの?」

「美しい春です」

「君のイメージにピッタリだね」

「そうですかね……」

「先輩のヒデカズは?」

秀和はおもむろに地面に落ちていた木の枝を使って文字を書いた。

『青井秀和』

「先輩もピッタリですね」

「そう?」

「だって、T高生って凄く優秀だから」

「まぁ、それなりに勉強は出来ると思うけどね。人としてはどうだろう」

「先輩は人としても素敵だと思います」

「どうして?」

「私を人として接してくれました」

「え?」

" 私、さっき家政婦って言ったけど、奴隷と変わらないんです "

そう言おうとしたが、美春はぐっと呑み込んだ。

こんなことを聞いたら、今度こそ本当に困ってしまうよね。困った顔は見たくないな。

美春は故意に話題を変えた。
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