陰が日向に変わる時
土曜日になり、古城家を出ると、美春は図書館に向かって駆け出した。早く着いても開いていないのはわかっているが、とにかく、あの牢獄のような場所から一刻も早く離れたかった。

美春は枝垂れ桜の下にあるベンチに腰掛け、開館を待つ。
しばらくすると、

「美春」

穏やかで優しい声が美春を呼んだ。

秀和の顔を見た瞬間、一気に目頭が熱くなり、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。笑わなければダメだ。そう思っても、涙は止まってくれない。
そんな美春を、秀和は人目も憚らず抱きしめた。

秀和の温もりに傷ついた心が癒やされていく。美春の涙が止まるまで、秀和はずっと抱きしめていた。
落ち着きを取り戻した美春をベンチにそっと座らせ、

「何があったのか話してくれないかな？」

美春の頭を優しく撫でながら問いかけた。

美春は親の借金から、現在に至るまでの事実を包み隠さず話しをした。

「酷いな……」

話を聞き終えた秀和は、眉根に深い皺を刻んでいた。

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