陰が日向に変わる時
Ⅳ.
秀和と出会ってもうすぐ一年。
毎週訪れる秀和との幸せな時間は、誰にも邪魔されることなく過ごすことができている。

けれど、秀和はあと半年で高校を卒業する。卒業後の進路は決めているのだろうか。
卒業しても、このまま会うことはできるのだろうか。
一気に不安が押し寄せる。

考えだすときりがない。もう余計なことは考えないようにしよう。

美春は気持ちを切り替え、いつものテーブル席に座り、秀和が来るのを待った。

「おはよう、美春」

「おはよう、カズくん」

どうしたのだろう。なんとなく元気がないような気がする。

「カズくん、体調悪い?」

「え?」

「あまり顔色良くないから」

「……」

思案げに黙っていた秀和が、フッと自嘲気味に笑った。

「俺、ダメだね。美春の前では冷静を保てない」

「…… 何かあった?」

「美春、外のベンチに移動しよう」

「うん」

外のベンチを利用する時は、話し声が利用者の邪魔になるのを避けるためでもあるが、大抵他人には聞いて欲しくない内容の話しをする時だ。

何だか胸騒ぎがする。

秀和はいつものようにハンカチを広げ、美春を座らせると、自分も隣に腰掛けた。

「俺、日本を出ることになった。アメリカの学校に行くことになったんだ」

「えっ⁉︎」

進学は確実だろうなと思っていたが、まさかアメリカだとは思ってもみなかった。
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