陰が日向に変わる時
古城家に来た時には中学を卒業したばかりだった美春も、昨日二十歳を迎えた。
誰からもおめでとうと言ってもらえない誕生日だった。古城家にいるのだから仕方ないことなのだけれど……

そして、美春の成人を待っていたかのように、時貞から呼び出しを受けた。

「ここに座りなさい」

時貞に指示され、美春はリビングテーブルの前に正座した。
目の前には書類らしきものが置いてある。

「これにサインするんだ」

「何ですか? これ」

「何でもいい、早くサインするんだ」

書類には付箋が貼られている。そこに記された文字を見た瞬間、美春の背中を冷や汗が伝った。

【連帯保証人】

慌てて内容を確認すると、父親の借金についての返済契約書だった。

『絶対にサインはするな』

すぐさま、秀和の顔が浮かんだ。
美春は意を決して書類を突き返した。

「サインはできません」

「はぁ? お前に決定権などない。家族がどうなってもいいのか?」

『強要を強いればそれは犯罪だ』

秀和の言葉が美春の背中を押す。

「それでもサインはできません!」

美春は怯むことなく堂々と拒絶した。

美春の意志は揺らぐことはない。

しばらく押し問答を続けていると、突然リビングのドアが開いた。

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