陰が日向に変わる時
図書館を出ると、美春と秀和は美春の実家へ向かった。

実家に到着し、インターホンを押す手が寸前で止まってしまった。
数時間前に気持ちを爆発させて出て来てしまった手前、実家に戻ることに抵抗があったのだ。だが、美春の気持ちを察したのか、秀和が美春の両手を優しく包み込んだ。

「俺がついている」

秀和に背中を押され、意を決してインターホンを鳴らした。

「どなた様ですか?」

「美春だけど」

「美春……」

母親はすぐに姿を見せた。

「みは……」

母親の視線は美春を離れ、隣に立っている秀和に向いた。

「初めまして、青井秀和と申します。今日は挨拶とご報告に参りました」

「報告?」

「はい」

母親が二人をリビングに通す。父親はソファーに腰掛けていた。

「お父さん、お母さん、話があるの」

「とりあえず、お茶淹れるわね。ここに座って」

母親がダイニングテーブルの椅子を引く。

秀和と父親が椅子に座るのを見届けると、美春は母親が淹れたお茶をそれぞれの前に置いた。
そして、皆が腰掛けたところで秀和が口火を切った。
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