陰が日向に変わる時
美春が荷物を撮りに行っている間、秀和は時貞を追い詰める。

「貴様、私を誰だと思っているんだ!」

「古城家の当主ですねぇ」

「そうだ。貴様みたいな小僧が私に楯突くとどうなるかわかっているんだろうな!」

「ほほぅ、脅かしですか? まぁ、いいでしょう。俺は、あなたが何者でも容赦はしない。これから俺に用があれば、弁護士を通してもらう」

秀和は柊悟の名刺を差し出た。

「俺の顧問弁護士だ。古城の当主なら、彼を知っていると思うが」

名刺に視線落とした瞬間、時貞の表情から血の気が引いた。

「桐山…… 桐山法律事務所だと! 貴様何者だ! 何故お前ごときの若僧の顧問弁護士が……桐山柊悟だと!」

眉間に深い皺を刻み、睨みつける時貞を秀和は涼しい顔で迎え撃つ。

「やはり彼をご存知でしたか。なにせ、無敗の最強弁護士ですからね。顧問料も桁違いだ。はっきり言います。俺、あなたよりかなり収入あると思いますよ」

「なっ……」

その時、リビングのドアがノックされ、美春がボストンバッグ一つを抱え戻ってきた。

「準備できました」

秀和はふわりと柔らかい笑みを美春に向けた。

「じゃあ、行こうか。あぁそうだ、これ、お嬢さんに渡してください。ファッショに興味があるとお聞きしましたのでプレゼントさせてもらいます。きっと喜んでもらえると思いますよ。では、失礼します」

秀和は一枚の紙をテーブルに置くと、美春の腰に腕を回し、エスコートするように古城家の門を抜けた。
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