陰が日向に変わる時
柊悟たちと別れ、その足で区役所に行き、婚姻届を提出した。土曜日だったので、受理は週明けになり、パスポート申請も来週になることは承知していたが、どうしても早く提出したかった。

そして、区役所を出た後は都内の高級ホテルにやって来た。
ロビー階のフロントはスルーし、高層階のラウンジフロアでエレベーターを降りると、コンシェルジュデスクに座っていた黒服姿の女性が立ち上がり、「お帰りなさいませ」と深く腰を折った。

美春はぺこりとお辞儀をし、秀和の後をついて行く。
連れてこられた部屋は、長期滞在型のセミスイートの部屋だった。
秀和はコレクションが終わるまでの二ヶ月間、この部屋を借りている。

「凄いね、こんな部屋、雑誌でしか見たことない」

「気に入った?」

「気に入ったどころの話じゃないよ!」

こんな部屋に連れてこられ、今、目の前で繰り広げられている会話は現実なのに、美春は、見知らぬ世界をふわふわと浮いているような感覚を覚えていた。

「美春、君に合わせたい人がいる。もうそろそろ来ると思うんだけど……」

「合わせたい人?」

美春が首を傾げると同時に、タイミングよくインターホンが鳴った。

秀和がドアを開けると、スタイル抜群の女性が姿を見せた。長身の美春よりも更に高い。
美春の顔を見るや否や「貴女が美春ちゃんね。会いたかったわ」と突然抱きついてきた。

この女性(ひと)どこかで見たことが……

「あっ!」
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