陰が日向に変わる時
秀和は苦笑いを浮かべている。

「まだ話してない」

「嘘でしょう? 早く話しなさいよ」

秀和は、自分の髪を手でわしゃわしゃとしながら美春の前に立った。

「モデル、モデルをやって欲しい」

「え?」

「俺のデザインしたドレスを着て、ランウェイを歩いて欲しい」

「…… 」

やっぱりこれは夢だ! 私は今、図書館にいて、きっと本を読みながら眠ってしまったんだ。そして、夢を見ている。そうだ、絶対そうだ。

「美春?」

美春は一度目を瞑り、ゆっくりと開いた。

「あれ? 図書館じゃない」

「美春? どうした? 図書館?」

やっぱり現実?

「え? えぇぇぇぇぇっ!!!」

「ど、どうしたんだよ!」

「夢じゃない、夢じゃないのよ、カズくん、どうしよう、夢じゃないんだよ」

「美春、どうしたんだ? 大丈夫か?」

美春の身体がガタガタと急に震え出した。
秀和は美春を引き寄せ、強く抱きしめた。そして優しく頭を撫でる。

「ごめんな、驚かせてばかりで、気持ちが追いついていないんだよな」

秀和に抱きしめられた美春は、ドクンドクンと規則正しい秀和の心音によって、徐々に落ち着きを取り戻していた。
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