陰が日向に変わる時
ショーが終わると、秀和には囲み取材が待っていた。

若くして不動の地位を築き上げたデザイナー
"AOI KAZU"
端正な顔立ちと高身長のルックスも相まって、芸能人並みの人気だ。

そんな AOI KAZU がモデルにキスをしたのだ。マスコミが放っておくはずがない。

秀和は取材陣の前に姿を現した。

「AOI さん、キスをされたモデルの女性についてお伺いしたいのですが」

「私の妻です」

周りが一気に騒ついた。

「ご結婚されていらっしゃったのですか?」

「先月入籍いたしました」

「今回、何故奥様をモデルに?」

「あの衣装を完璧に着こなせるのは彼女だけだからです。コレクションを私物化していると、不快に思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、あの衣装はどうしても妻に着てもらいたかったんです」

「奥様はとてもお美しい方でいらっしゃいましたが、奥様のどんなところに惹かれたのですか?」

「全てです。彼女の全てが愛おしい。どうぞ、妻にはとことん甘い旦那だと笑ってください」

「AOIさんにそこまで想われている奥様はきっと幸せなのでしょうね」

「そうであって欲しいと思います。僕が今ここに立っていられるのは、妻がいてくれたからです。僕は、人生をかけて妻の笑顔を守っていきます。どうか、暖かく見守っていただけたら幸いです。これからも全てにおいて真摯に向き合い、精進して参りたいと思いますので、妻共々よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました」

秀和は一礼すると、爽やかな笑顔を残し、会見場をあとにした。
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