陰が日向に変わる時
ホテルに戻りシャワーを浴びた美春と秀和は、バスローブを羽織り、ソファーに並んで腰掛け向かい会った。
ライトアップされた東京タワーが、二人を見守るように佇んでいる。

「美春、今日は君が一番輝いてたよ」

「お世辞でも嬉しい」

「お世辞なんかじゃない!」

「ありがとう、カズくん …私……」

「ん?」

「ずっと夢を見ているみたい。カズくんが迎えに来てくれて、古城家から連れ出してくれて、結婚して、モデルとしてステージに立たせてもらって…… 怖いの」

「怖い?」

「朝起きて、全てが夢だったらどうしようって」

秀和は美春を包み込むように抱きしめた。

「夢じゃない。美春は俺の腕の中にいる。温かいだろう?」

「うん、温かい」

秀和が、美春の額に自分の額をこつんと重ねる。

「美春、愛してる」

「私も、カズくんを愛してる」

二人は微笑み合い、口づけを交わした。
口づけは段々と深くなり、美春の不安を取り除くように、秀和は美春を抱いた。

美春の美しい裸体をデッサンするように指を滑らせると、吐息混じりの甘い声が、秀和の野生を目覚めさせる。

「美春、俺だけの美春」

美春からとめどなく溢れる蜜に誘われるように、秀和はゆっくりと身をおさめた。
重なり合った身体は、水音を響かせながら、激しく揺さぶり合う。
美春は尖った声と同時に身体を仰け反らせ、秀和も唸るように美春の奥深くに全てを解放した。

避妊はしていない。美春自身も拒んだ。

その夜は、お互いの愛を確かめ合うように、何度も何度も身体を重ねた。
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