陰が日向に変わる時
ホテルでの生活を終え、秀和の拠点であるニューヨークにやって来た。
秀和の住むマンションに到着してすぐに、蓄積していた疲労のせいなのか、美春は高熱で寝込んでしまった。そんな美春のために秀和はあれやこれやと世話を焼く。お粥を作ったり、水分補給をさせたり、身体を拭いてやったりと、自分そっちのけで看病に勤しんだ。
もともと美春に甘い秀和だが、更に甘さが増したようだ。
秀和とそっくりな秀和父も、大量の果物を差し入れてくれるなど、親子で美春への溺愛を競い合っているようだった。

初めての海外生活は戸惑うことばかりだ。けれど、過保護すぎるくらい大切にしてくれる秀和に支えられ、美春は毎日満たされた生活を送ることができている。

秀和もまた同様。美春の温もりを感じる生活に心身ともに満たされ、公私共にすこぶる調子が良い。
美春は幸運の女神だと美紗都が言っていたが、全くそのとおりだと秀和は美紗都の言葉を噛み締めていた。

数ヶ月が経ち、美春は、現地の人ともなんとかコミュニケーションを取りながら過ごしている。
ニューヨークで生活を始めたばかりの頃、まさか美春が会話できると思っていなかったようで、秀和はとても驚いた様子だった。
いつ学んだのかと問われ、図書館で勉強していたのだと話せば、「俺をどこまで惚れさせる気だよ」と、人目も憚らず熱い抱擁が待っていた。

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