陰が日向に変わる時
秀和は、ハリウッド女優が着用するパーティードレスの他、世界各国のセレブからもオファーを受けるなど多忙な日々を送っている。
そんな中でも美春とのデートは欠かさない。
博物館や美術館デートが美春のお気に入りだ。
秀和と手を繋ぎ、ゆっくりとした時間を過ごす。とても贅沢な時間だ。中でも、ニューヨーク公立図書館デートは二人の一推しだ。

デート当日の午前中、支度をしていると、秀和のスマホが着信を告げた。柊悟からだ。
会話がひと段落ついたところで、秀和が気を利かせ、美春にスマホを手渡した。

「実家のこと、気になるだろう?」

美春は頷き、スマホを受け取った。そして実家のことを訪ねてみた。
柊悟の話によれば、能瀬家は自宅を売却し、公営住宅に移り住んだようだ。思いのほか高値で売却でき、残債は毎月無理なく返済しているとのことだった。

これは、後に秀和が教えてくれたことなのだが、コレクション当日、控え室に乗り込み、警察沙汰になった麗果の主人やら奴隷やらといった暴言がきっかけとなり、古城の経営する企業が労働基準監督署の調査対象となった。結果、労働基準法違反が認められ、是正勧告を受けたのだという。

人生本当に何が起こるかわからない。美春は改めてそう思った。
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