陰が日向に変わる時
次の日登校すると、麗果が話しかけてきた。

「能瀬さん、ちょっといい?」

「うん」

二人で人気のない場所に移動する。

「うちのパパと、話、したんでしょう?」

「うん」

「お家、大変なことになったね」

「そうだね……」

「私、大歓迎よ」

「え?」

「能瀬さんと一緒に住めるなんて凄く嬉しいもの。そりゃあ家政婦っていうことだから仕事しなくちゃいけないけど、同い年同士、楽しく過ごしましょうよ。能瀬さんは何が好き? 私はファッション誌を見るのが好きよ」

眩いばかりの笑顔を向ける麗果。

美春には夢がある。ファッションに携わる仕事に就くこと。毎月のお小遣いで好きなファッション雑誌を買い、その一冊を穴が開くほど見るのが美春の楽しみなのだ。

「私も好き」

嬉しくて笑顔で答えた。

「ねぇ、能瀬さん、私たちきっと仲良くなれると思うわ。そう思わない?」

「そうだね」


その日を境に美春と麗果の距離は一気に縮まった。
お互いのクラスを行き来し、昼食も一緒に取る。勉強が苦手な麗果に美春が教えてやったりと、周囲からは仲が良すぎて姉妹みたいだと言われることも多くなった。

「私たち、前世では私が妹で、美春ちゃんがお姉さんだったと思うの」

真剣な面持ちで話す麗果に、

「麗果ちゃんが妹だったら、きっと溺愛してたと思うわ」

美春は優しい笑みを向けた。


そうして卒業を迎え、美春は必要最低限の荷物を抱え、古城家の門をくぐった。
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