陰が日向に変わる時
II.
美春はリビングに集う古城家の人々に挨拶をする。

「今日からお世話になります。よろしくお願いします」

深くお辞儀をし、視線を麗果に移すと、不機嫌に目を逸らされた。

「美春、わかっていると思うが、この瞬間からお前は古城の使用人だ。身分をわきまえてしっかり働くんだぞ」

時貞の口調はとても威圧的だった。

「はい……」

「田所、屋敷内を案内したら部屋に連れて行ってやれ」

「かしこまりました」

美春は田所に連れられ屋敷を回った後、母屋のすぐ裏手にある別棟に向かった。板張りの廊下に沿って、いくつか部屋があり、それぞれの引き戸には少しずつ柄の違うネームプレートのようなものが貼られていた。
取手の部分には南京錠がついている。
全て使用人の部屋であり、田所は誰が住んでいるのかを説明しながら奥へ進んだ。そして、ある引き戸の前で立ち止まった。

「美春、君の部屋はここだ。荷物を片付けたら、部屋に置いてある服に着替えて風呂場に来なさい。君の仕事内容はそこにいる使用人に聞くように」

「はい」

田所は踵を返し、別棟を出て行った。

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