お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「魔法の勉強、か。なるほど、それで氷結魔法の使い手である僕に……」
納得した様子でしげしげと頷き、小公爵はふと掛け時計を見上げた。
「勤勉なのはいいことだ」
「あ、ありがとうございます」
「だが、今すぐ時間を取るのは難しい。僕も何かと忙しいからな」
「そうですよね。突然こんなことをお願いしてしまい、申し訳ありません。魔法のことは自分でどうにかします」
さすがに『そこを何とか!』と食い下がる訳にはいかず、席を立つ。
『無理を言ってしまって、申し訳ない』と思いながら、踵を返そうとすると────
「ちょっと待て」
────と、引き止められてしまった。
『えっ?』と声を上げて固まる私の前で、小公爵は眼鏡を押し上げる。
「誰も『教えない』とは言っていない。『今すぐ時間を取るのは難しい』と言っただけだ。明日でもいいなら、時間を取れる」
「ほ、本当ですか?」
「ああ」
間髪容れずに首を縦に振る小公爵に、私はパッと表情を明るくした。
納得した様子でしげしげと頷き、小公爵はふと掛け時計を見上げた。
「勤勉なのはいいことだ」
「あ、ありがとうございます」
「だが、今すぐ時間を取るのは難しい。僕も何かと忙しいからな」
「そうですよね。突然こんなことをお願いしてしまい、申し訳ありません。魔法のことは自分でどうにかします」
さすがに『そこを何とか!』と食い下がる訳にはいかず、席を立つ。
『無理を言ってしまって、申し訳ない』と思いながら、踵を返そうとすると────
「ちょっと待て」
────と、引き止められてしまった。
『えっ?』と声を上げて固まる私の前で、小公爵は眼鏡を押し上げる。
「誰も『教えない』とは言っていない。『今すぐ時間を取るのは難しい』と言っただけだ。明日でもいいなら、時間を取れる」
「ほ、本当ですか?」
「ああ」
間髪容れずに首を縦に振る小公爵に、私はパッと表情を明るくした。