お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
この場に暗く重い空気が流れる中、動きを見せたのは────私達じゃなくて、焼け落ちた天井だった。
いや、正確にはそれをやった人……だろうか。
「────あっ、やべ……!ミスった……!」
天井から降ってきた見知らぬ男性の声に、リエート卿と兄は強い反応を示した。
弾かれたように顔を上げ、天井と一緒に焼け落ちた鹿の魔物を足蹴にすると、声の主を確認する。
と同時に、安堵の息を吐いた。
「────兄上……!」
リエート卿は感嘆の滲んだ声色でそう叫び、表情を和らげる。
彼の視線の先を辿ると、赤髪金眼の美丈夫が目に入った。
「えっ?リエート?何で居んの?洗礼式は?」
ポカンとした様子で疑問を呈する彼に、リエート卿はワケを説明する────よりも先に抱きついた。
風魔法で跳躍をつけて。
「ぐふっ……!?」
身長差の問題か、赤髪の美丈夫はリエート卿のタックルをお腹で受け止めてしまった。
『ちょっ、もろ鳩尾に……』と零す彼に対し、卿はキラッキラの笑顔を見せる。
「兄上……!無事で良かった……!」
「お、おう……お前もな」
困惑しながらも何とか笑みを作り、赤髪の美丈夫はグッと親指を立てた。
『グッドラック』と言っているようにも見えるそのポーズに、私は苦笑を零す。
いや、正確にはそれをやった人……だろうか。
「────あっ、やべ……!ミスった……!」
天井から降ってきた見知らぬ男性の声に、リエート卿と兄は強い反応を示した。
弾かれたように顔を上げ、天井と一緒に焼け落ちた鹿の魔物を足蹴にすると、声の主を確認する。
と同時に、安堵の息を吐いた。
「────兄上……!」
リエート卿は感嘆の滲んだ声色でそう叫び、表情を和らげる。
彼の視線の先を辿ると、赤髪金眼の美丈夫が目に入った。
「えっ?リエート?何で居んの?洗礼式は?」
ポカンとした様子で疑問を呈する彼に、リエート卿はワケを説明する────よりも先に抱きついた。
風魔法で跳躍をつけて。
「ぐふっ……!?」
身長差の問題か、赤髪の美丈夫はリエート卿のタックルをお腹で受け止めてしまった。
『ちょっ、もろ鳩尾に……』と零す彼に対し、卿はキラッキラの笑顔を見せる。
「兄上……!無事で良かった……!」
「お、おう……お前もな」
困惑しながらも何とか笑みを作り、赤髪の美丈夫はグッと親指を立てた。
『グッドラック』と言っているようにも見えるそのポーズに、私は苦笑を零す。