お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「討伐隊が破れたら、いよいよこっちも危険だ。俺達が全員無事で居られるのは、屋敷にくる魔物の数が少ないから……さすがの俺でも、十数体を一気に相手するのは難しい」

 『単純な火力だけなら、こっちの方が上だろうけど』と零しつつ、彼は深い溜め息を零す。
と同時に、窓の外へ視線を向けた。

「てか、そもそも────火炎魔法の使い手に篭城作戦はどう考えても、不向きなんだよな〜」

 嘆かわしいと言わんばかりの口調でそう語り、アレン小公爵はどこか遠い目をする。
『二次被害が半端ない』と肩を落とす彼の前で、私は微かに目を見開いた。

 あっ、そっか。
屋内で炎を放つのは、危ないものね。
最悪、火事になってしまうから。

 『さっきだって、天井を焼け落としていたし』と思い返す中、アレン小公爵は壁に背を預ける。

「おかげで、屋敷内の魔物を一掃することさえ出来ていない」

 『不甲斐ない……』と嘆くアレン小公爵に対し、兄は少し考え込むような素振りを見せた。
かと思えば、パッと右手を挙げる。
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