お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 小公爵はなんだかんだ言いながら、妹思いなのかもしれない。
これまでは多忙のあまり、交流を持てなかっただけで。

 『もし、そうなら嬉しいな』と思いつつ、私は自身の胸元に手を添える。

「では、是非お願いします」

 ────と、返事した翌日のお昼頃。
私は小公爵の指示通り動きやすい乗馬服に着替え、裏庭を訪れた。
そして、既に到着していた小公爵を見つけると、直ぐさま駆け寄る。

「お待たせしました」

「いや、時間通りだから気にするな」

 『こちらが早く来すぎただけだ』と言い、小公爵は腕を組んだ。
かと思えば、背筋を伸ばす。

「では、早速魔法の講義を始めるとしよう」

 そう言うが早いか、小公爵はチラリとこちらを見た。

「ところで、貴様は魔法のことをどこまで知っている?」

「お恥ずかしながら、ほとんど何も知りませんわ」

「じゃあ、魔法の定義から説明した方が良さそうだな」

「はい、よろしくお願いします」

 『魔法=凄いこと』程度の認識しかない私は、素直に教えを乞う。
すると、小公爵は『……あぁ』とぶっきらぼうに頷いた。
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