お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 それにしても、討伐隊の人達はどこにいるのかしら?
魔物の大群を食い止めているというなら、そこまで奥には行ってないよね?多分。

 『そろそろ、手掛かりくらい見つかってもいいのでは?』と思いつつ、私は辺りを見回す。
────が、森の木々や大きい魔物に視界を遮られ、遠くまで見えない。

「リディア、魔力はあとどのくらいだ?」

「えっと正確な数字までは分かりませんが、まだ一割も使ってません」

 体感で残りの魔力量を推し量りつつ答えると、兄は僅かに目を剥く。
『これでまだ一割以下か……』と半ば呆れたように呟き、小さく肩を竦めた。
かと思えば、前を走るリエート卿に声を掛ける。

「リエート────上空から、討伐隊を探せ」

「えっ……!?大丈夫なのか、それ……!無駄に魔物が寄ってくるぞ……!」

「問題ない。こちらで蹴散らす。むしろ、こちらから出向く手間が省けて楽だ」

 言外に『囮の役割もある』と明かした兄に、リエート卿は一瞬固まった。
────が、直ぐに笑い出し、『ニクスらしい』と口にする。

「そういうことなら、遠慮なく行って(目立って)くるぜ!」

 『任せろ!』とでも言うように自身の胸を叩き、リエート卿は全身に風を纏った。
と同時に、浮遊する。
兄のことを信じているのか後ろは振り返らず、上空へ飛び立った。
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