お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「────リディアのデビュタントの準備に決まっているだろう、馬鹿が!」

「デビュタント……?あっ、そういやまだだっけ?」

 普通の子供より大人びた印象を受けるせいか、デビュタントなんてとっくに終わっているものだと思っていた。
よく考えてみれば、最近洗礼式を終えたばかりだというのに。
『年下という感覚があまりなかった』と思いつつ、俺はおもむろに席を立つ。

「そういうことなら、また今度遊ぼうぜ」

「お前の『今度』がいつのなのか知らんが、リディアのデビュタントを終えるまでは無理だぞ」

「はっ?何でだよ?デビュタントの準備って、せいぜい礼儀作法の確認と衣装の用意くらいだろ?」

 ここデスタン帝国のデビュタントは、皇室主催の春のパーティーにて一斉に行われる。
なので、会場の手配や招待客のリストアップをしなくて済む分、楽だと思うんだが……。
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