お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『何故、そんなに時間が掛かるんだ?』と首を傾げ、俺はパチパチと瞬きを繰り返す。
『女の準備は長いの典型か?』と思いつつ、あれこれ考えていると、ニクスが苛立たしげに眉を顰めた。

「チッ……!ちょっと揉めているんだよ……!」

「はっ?何で?」

 思わず素で聞き返してしまった俺は、ポカンと口を開けて固まる。
だって、完璧主義のニクスや抜け目のないグレンジャー公爵が居て、トラブルなんて……想像もつかないから。

 となると、リディア本人に関することか?
例えば、礼儀作法がめちゃくちゃとか。
まあ、とてもそんな風には見えないけど。今だって、優雅に紅茶を嗜んでいるし。
細かいことは分かんねぇーけど、揉めるほど問題があるとは思えない。
じゃあ、衣装関係か?
リディアのセンスが壊滅的すぎて説得に時間を要してしまい、全体的に準備が遅れているのかもしれない。
と思ったが、それはないな。
だって、ファッションにそこまで興味なさそうだし。
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