お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 体の作りに関わる事となると、本当にどうしようもないものね。

 山下朱里のとき嫌というほど思い知った先天的なものの恐ろしさを思い返し、私は嘆息する。
『まあ、健康な体を手に入れただけでも有り難く思わなきゃ』と考え、気持ちを切り替えた。
────と、ここで小公爵がこちらに手を差し出す。

「手を出してみろ。貴様の魔力について、少し調べてやる」

「えっ?そんなこと可能なんですか?」

「ああ。と言っても、さすがに魔力の総量や相性は検査してみないと分からないがな。でも、魔力の有無くらいは判別出来る筈だ」

「まあ、本当ですか」

 期待に胸を膨らませ、私は小公爵の手に自身の手を重ねた。
すると────体の中に冷たい何かが、入ってくる。
物凄く不思議……というか違和感のある感覚だが、不快感はなかった。
落ち着かない気分のまま、じっと耐えること二分────突然、小公爵がカッと目を見開く。
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