お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 既に四曲も踊っているから、ダンスは満足しているみたい。
なら、踊らせてもらおうかな?
リエート卿とは仲もいいし、色々お世話になっているから。

 風魔法の扱い方や簡単な体術などを教えてもらった過去を思い返し、私はリエート卿に向き直る。

「はい、喜んで」

 笑顔でダンスの誘いを承諾した私は、差し出された手に自身の手を重ねた。
すると、リエート卿は嬉しそうに頬を緩める。

「んじゃ、あっち行こうぜ。ニクス、ちょっとリディアを借りるな」

 繋いだ手をギュッと握り締め、リエート卿は元気よく歩き出した。
『今日のためにダンスを練習してきたんだ』と語る彼に連れられ、私は再び会場の中央へ。
美しいシャンデリアの光に照らされながら、ステップを踏み始めた。

「リディア」

「はい」

「今の生活は楽しいか?」

 唐突に……何の脈絡もなく質問を投げ掛けてくるリエート卿に、私は目を剥く。
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