お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 とりあえず、怪我はなさそうだけど……この反応は一体?
もしかして、頭でも打った?

 などと考えつつ、私はチラリとネクタイを確認する。
『青色……ということは、私と同じ一年生か』と推察し、対応を迷った。
もし在校生なら、保健室まで一緒についていこうと思ったが……同じ一年生なら、それは出来ない。
だって、場所が分からないから。
『ここはお兄様やリエート卿に頼んだ方がいいか』と思案する中、彼女は突然立ち上がる。

「わ、私は大丈夫なので……!」

 半ば怒鳴るようにして叫び、彼女は私の手を振り払った。
ビックリして何も言えない私を他所に、彼女は素早くこの場を立ち去る。
あっという間に見えなくなった彼女の背中を前に、私はコテンと首を傾げた。

 集合時間に遅れそうで、焦っていたのかしら?

 『あと五分もないものね』と思いつつ、私は周囲の人々に騒がしくしたことを謝る。
それから急いで集合場所へ向かい、入学式の説明を受けると直ぐに本番となった。
白黒の制服を身に纏う男女で埋め尽くされた会場内を前に、私は先生方の有り難い話を聞く。
式典への参加は初めてなので、妙にワクワクした。
────と、ここで新入生代表挨拶となる。
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