お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「あ〜〜〜!もう!何でこんなお人好しが、悪役令嬢になってんの……!?完全に人選ミスじゃん!」

 『扱いにくすぎる!』と文句を垂れつつ、ルーシーさんは私の肩から手を離す。
と同時に、コホンッと一回咳払いした。

「とにかく、これからは悪役になりきること!いい!?」

 『断罪についてはある程度便宜を図ってあげるから!』と言い、本題へ戻る。
何か使命感のようなものに取り憑かれているルーシーさんの前で、私はそっと眉尻を下げた。
あまりにも彼女が必死すぎて、『出来ません』と言えるような雰囲気ではない。
何より、私が力を貸すことによって彼女の助けになるなら……協力してあげたかった。

「分かりました。精一杯、頑張ります」

 ────という宣言のもと、私は悪役になりきることを誓った。
のだが……悪役っぽいことが、よく分からない。
いや、一応イメージはつくのだが……やりすぎるとイジメになってしまうし、こちらの気も悪いのであまり酷いことはしたくない。
『目指すはスマートな悪役』と思い立ち、ちょうどいい匙加減を探した。
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