お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 まず、怪我を負わせるのは絶対ダメよね。
となると、精神攻撃……?
嫌味な言動でも取れば、いいのかしら?

 昨日の一件からずっと頭を悩ませている私は、教室の隅っこの席に居るルーシーさんを見つめる。
次の授業の準備へ取り掛かる彼女を横目に、ゆっくりと立ち上がった。

 今はちょうど休み時間。仕掛けるなら、このタイミングしかない。

 お互い忙しいこともあり、モタモタしている暇はないため、早々に作戦を開始する。
『悪役になり切ってみせる!』と意気込みながらルーシーさんの席へ近寄り、声を掛けた。
無難に挨拶から入り適当に雑談を繰り広げてから、私は満を持してあるセリフを投げ掛ける。

「ルーシーさんの髪色って、とても華やかですね」

「えっ?あっ、うん……ありがとう」

 唐突な嫌味に驚いたのか、ルーシーさんはパチパチと瞬きを繰り返す。
『何?いきなり……』と言わんばかりの表情を前に、私は踵を返した。
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