お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 リエートの出会いも、ニクスの出会いも台無しになっちゃったから、せめてレーヴェンだけは!

 『全滅とか、絶対勘弁!』と思いつつ、私は図書室へ足を運んだ。
壁に沿って設置された本棚や中央に並べられたテーブルを一瞥し、私は一先ず二階へ上がる。
上から、探した方が早いと思って。

 よしよし、ちゃんと居る。

 吹き抜け部分から一階を眺める私は、目当ての人物を見つけて上機嫌になる。
『さて、あとは例のアイテムを探し出すだけ』と考えながら、私は本棚に向き合った。

 レーヴェンとの出会いイベントのシナリオは、こうだ。
ヒロインが勇者伝説という本を読んでいて、そこにたまたまレーヴェンが通り掛かる。
ここまで堂々と男性向けの嗜好品を楽しんでいる女性は少ないため、彼は興味を引かれてヒロインに話し掛けるのだ。
『女の子が冒険小説を読んでいるなんて、珍しいね』と。
その会話をキッカケによく話すようになり、読書の趣味が合うこともあって仲良くなる。
< 180 / 622 >

この作品をシェア

pagetop