お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 ゲームをプレイしていた当初は、レーヴェンの大人びた印象と子供っぽい趣味のギャップにやられていたんだよね。
容姿も言動もめちゃくちゃ優雅なのに冒険小説が好きとか、母性本能を擽られるわ〜!って。
あと、ヒロインと小説を語り合っている時に見せる笑顔がまた最高で……!
普段は上品なのに、アハハッて声を上げて笑うんだよ!
表情も本当に素って感じで子供っぽくて、かっっっわいいの!

 転生した今でも忘れられないレーヴェンの笑顔を思い浮かべ、私はちょっと口元が緩む。
────が、直ぐに表情を取り繕った。
誰もこちらに注目していないとはいえ、周りに人が居るから。
『こんな表情(かお)を見られたら、一生の恥だ』と自制しつつ、私は二階の本棚を隈なく調べる。
でも、目当ての勇者伝説はなかなか見つからない。

 あれ?おかしいな……ゲームでは、確か二階の本棚にあった筈。
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