お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 仲睦まじい様子の二人を前に、私は膝から崩れ落ちる。
『またお前かよー!』と叫びそうになるのを、必死に堪えながら。

 二人とも凄く小声だったから細部まで聞き取れなかったけど、勇者伝説の話をしていたのは確か!

 『私の地獄耳を舐めるな!』とよく分からないキレ方をしつつ、勢いよく立ち上がる。
腹の底からフツフツと湧き上がる怒りを前に、私は目を吊り上げた。

 一度きっちりお灸を据えた方が良さそう!
じゃないと、あの馬鹿!またやらかすでしょ!

 悪役になり切らないどころかフラグを折りまくるリディアに嫌気がさし、私は説教を決意。
『ギッチギチに絞め上げてやる!』と闘志を燃やしながら、一旦この場を後にした。
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