お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

生徒会

 ペンをへし折るほど悔しがっていた兄を思い出し、私は内心苦笑する。
と同時に、『お邪魔しています』と二人に挨拶した。
すると、彼らは『おう』とか『いらっしゃい』とか言いながらそれぞれ席に着く。

「ったく、野外研修の準備なんて先生方でやればいいのになぁ」

 『人使い荒すぎ』と文句を垂れつつ、リエート卿は箱を開けた。

「しかも、行くのは山だろ〜?海なら、まだやる気出たのに」

「ここから、海まで一体何キロあると思っているんだ」

 『日帰りで行ける距離じゃない』と指摘する兄に、リエート卿は小さく肩を落とす。

「行きたい場所を口にするくらい、別にいいじゃねぇーか」

「そういうのは、他所でやれ。リディアに悪影響だ」

「お前、マジでリディアのことしか考えてねぇーな」

「兄として、当然のことだ」

「シスコン、拗らせすぎだろ」

 呆れ気味に苦笑を漏らすリエート卿は、ガバッと机に突っ伏した。
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