お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 目を見開いて固まる私達を前に、レーヴェン殿下は困惑する。

「あれ?もしかして、秘密だった?だとしたら、ごめんね。二人で何を話しているのか、気になって……つい聞いちゃった」

 申し訳なさそうに眉尻を下げ、レーヴェン殿下は困ったような表情を浮かべた。
そして、『僕に隠し事だと!?』と噴火寸前の兄と硬直したままのリエート卿を見比べ、更に戸惑う。
『どうしよう?』とオロオロするレーヴェン殿下を前に、私は慌てて首を横に振った。

「いえ、秘密ではありませんのでご安心を。ただ、言う必要がないかと思って黙っていただけで……それより、驚きましたわ。私とルーシーさんの仲を知っているなんて。ほら、レーヴェン殿下はよく人に囲まれていますから」

 『こちらを気にかける余裕なんてないかと思っていた』と主張し、私は愛想笑いを浮かべる。
まさか、校舎裏で話していることまで知られているとは思わなかったため、ちょっと動揺していた。

 さすがに会話の内容までは、知らない……わよね?
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