お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『話は終わりだ』とでも言うように仕事へ戻る彼の前で、リエート卿はバタンとテーブルに突っ伏す。
と同時に、拳をテーブルに叩きつけた。

「横暴にも程があるだろぉぉぉおおおお!!」

 というリエート卿の絶叫が、生徒会室に木霊した────その数週間後、私達はついに野外研修へ繰り出す。
場所は事前の告知通り、山。
と言っても、頂上ではなく麓なので遭難や体力不足の心配はないが。
形式はどちらかと言うと、ピクニックに近いかもしれない。

 学園から、山までの移動も馬車だったし。
歩いたのは、ほんの数キロ程度。
それでも、息切れしている人は結構居るけど。
貴族令嬢なんて、特に。

 『ヒールなんて履いてくるから』と苦笑いしつつ、私は女子生徒に水の入ったコップを手渡す。
『ありがとうございます』と礼を言う彼女にニッコリと微笑み、別の方の元へ向かった。
────が、兄に捕まってしまう。
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