お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「チッ。何でこっちに来た」

「なんだ、来ちゃダメなのか?」

 『今、自由時間だろ』と反論するリエート卿に、兄は眉を顰める。

「仲良く特待生とお喋りでもしていろ」

「その特待生が、お前と喋りたいんだとよ」

「はぁ?」

「てことで、あとは頼んだ」

 先日の仕返しのつもりか、リエート卿はルーシーさんを兄に預けてトンズラする。
────私の手を引いて。
挨拶する暇もなく人混みの中へ連れてこられた私は、パチパチと瞬きを繰り返す。
兄の反応を考えると、今すぐ戻るべきだが……ここでリエート卿の手を離したら、迷子になりそうだ。
なので、一先ず彼について行く。
すると、一年生の多いエリアへ辿り着いた。
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