お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「リエート卿自身がお付けになっては?」

「俺はいいんだよ。どうせ、似合わねぇーし」

「でも……」

「俺はリディアに貰ってほしいんだよ。お前になら、何をあげても惜しくない。だから、貰ってくれ」

 無邪気な笑顔でそう語るリエート卿に、私は根負けする。
ここまで言われて、突き返すのはあまりにも失礼だから。
『彼には今度、何かお礼しよう』と思いつつ、首を縦に振った。

「分かりました。ありがとうございます」

 『大事にしますね』と言い、私は柔らかく微笑む。
横髪に挿されたクローバーを少し触りながら、『帰ったら、押し花にでもしよう』と考えた。
────と、ここで視界の端に銀髪が映る。

「おや、四葉のクローバーかい?珍しいね」

 そう言って、私とリエート卿の間にスルッと入ってきたのはレーヴェン殿下だった。
『生徒会の仕事がある』とでも言って私達のところに来たのか、ファンと思しき女子生徒達はこちらを遠巻きにしている。
おかげで、かなり目立ってしまった。
『これはお兄様に見つかるのも時間の問題ね』と苦笑しつつ、私はレーヴェン殿下に向き直る。
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