お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「ごきげんよう、レーヴェン殿下。こちらのクローバーは、リエート卿にプレゼントして頂きましたの」

「へぇー?意外だな。リエートはジンクスとか、おまじないとか知らないかと思っていたよ」

「いや、さすがの俺だって四葉のクローバーくらい知ってますよ」

 『殿下は俺をなんだと思っているんですか』と文句を言い、リエート卿は溜め息を零した。
『心外だ』と言わんばかりの態度を取る彼に対し、レーヴェン殿下は謝罪する。
と言っても、悪びれる様子は一切ないが。
毒気を抜かれるほどの爽やかな笑みを前に、リエート卿は呆れ気味に肩を竦めた。
別にそこまで怒っている訳じゃないので、『まあ、いいか』と割り切ったらしい。

「そういえば、ニクスとルーシー嬢はどうしたんだい?」

 私とリエート卿のペア(?)が居ないことを指摘し、レーヴェン殿下はコテリと首を傾げる。
兄の性格上私の傍から離れることは有り得ないし、リエート卿も責任感が強いためルーシーさんの護衛を勝手に放棄するとは思えない。
だから、不思議で堪らないのだろう。
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